オープンCAE

「オープンCAE」というのは、「オープンソースのCAE」の略称ですが、単に「ソースコードがオープンなCAE」という意味に加えて「活用ノウハウがオープンになっている」という意味を込めて「オープンCAE」と呼んでいます。

詳しくは管理人が著者の一人として出版した「はじめてのオープンCAE」という書籍があり、その中でCAEの意義から始まって詳しく述べているので、興味のある方はそちらもご覧下さい。

 CAEとは

Computer Aided Engineering 平たく言えば「ものづくりにコンピュータを活用しましょう」ということです。

CAEを実施するには、コンピュータというハードウェアと、それを動かすソフトウェアが必要です。コンピュータの進化とともに、ソフトウェアの位置づけが大きく変化してきています。

従来のCAE

コンピュータが世の中に出たばかりの時代には、コンピュータはたいへん高価で、ソフトウェアはおまけでついてくるという時代もありました。

コンピュータがある程度普及して、様々なソフトウェアが開発されるようになり、CAEも一般の企業(大企業がほとんどですが)に認知されるようになると、コンピュータの値段も大きく下がっていたので、ソフトウェアの値段として、ハードウェアとほぼ同等の値段であれば売れる時代が数年前まで続きました。

しかし、今やコンピュータの値段は劇的に安くなってしまいました。それなのに業務で使用できるCAEをやろうと思ったら、昔ながらの高価なソフトを買って、それなりのサポートを受けないことには使えない・・・というのが現状。

一方、オープンCAEというか、フリーで使えるCAEも昔から存在しましたが、多くは研究者の個人的な成果の公開という形で、何らサポートやヴァージョンアップもなく、いつの間に消失していたなど、ユーザーという立場から見て、とても信頼に足るものはありませんでした。

ソフトウェアのガラパゴス

ソフトウェアという観点で見ると、CAEソフトウェアは一般のソフトウェアに比べてかなり特殊な位置づけにあるといってよいでしょう。多くのCAE以外のソフトウェアは低価格化、もしくはオープン化の潮流にあるのに対して、いまだ1本あたり数百万円といったライセンスビジネスが主流です。これはその他のソフトウェアに比べて、ユーザーの絶対数が少ない為、開発コストを回収する為の苦肉の策であるというのが売る側の理屈です。

開発コストの大部分は、多様なユーザーに対するインタフェースを充実させることにありました。CAEのユーザーは、他のソフトウェアに比べると、一人一人のユーザーのニーズが大きく異なります。同じ構造解析をするにしても、業界や業種によって設計の考え方がまるで異なるからです。これら多様なユーザーに対する汎用インタフェースの開発に主眼があったのです。

しかし、その結果出来たソフトウェアは、非常に複雑な階層メニューとなって、ソフトウェアを使いこなす為の操作教育を受講し実務経験を積んで習熟した、いわゆる解析専任者でないと使えないソフトウェアになってしまいました。その結果ユーザーの数はいつまで経っても大きくは伸びません。

本来CAEを活用したいのはものづくりエンジニアであったはずなのに、その為のソフトウェアはものづくりエンジニアからはどんどん手の届かないものになっていってしまいました。

そういった状況の中、CAEの分野でも、これまで商用ソフトウェアであったものをオープンソース化するという、かつてのフリーソフトの延長線上ではない新たなオープンCAEが登場するようになりました。

オープンCAEと商用CAEは何が違うのか

新たなオープンCAEの代表例がOpenFOAMです。

商用ソフトウェアであった時代と、2004年にオープンソース化されて数年間は、商用ソフトウェアに類似の統合的なGUIも同時に使えるソフトウェアでした。しかし2008年のVer.1.5から以降は、GUIの開発を中止して、ソルバー開発に特化することになったのです。

CAEソフトウェアと一口にいって、実体は大きく分けて、形状作成、メッシュ作成、ソルバー、ポスト処理といった各段階でソフトウェアの処理内容は大きく変わって、プログラミングの観点からは、全く別物であるといってもよいものです。

したがって、これらの作業をシームレスにする統合環境も欲しいとなる訳で、商用ソフトウェアはこの路線です。プログラミング的には別物のソフトウェアをそれぞれ開発して、かつ全体を統合化しなくてはならないので、開発コストも嵩むはずです。

一方、オープンソースでは、OpenFOAMがソルバー開発に特化したように、統合化した使い易さを追求するよりも、個別の機能に注力した開発が主眼です。個別の機能は少数精鋭の開発スタッフで何処にも負けないものを頑張って作る。オープンソースなのでインタフェースも公開されているので、周辺ソフトはお好きなものを、お好きなやり方(ほとんどの場合はコマンド入力で)使って下さいという訳です。

 オープンCAEと商用CAEをどう使い分けるのか

上の図は、管理人が在職時代に「デンソーのオープンCAE活用」と題して発表した資料から切り出したものです。商用CAEは解析専任者が様々なニーズに短時間で答えを出すという用途に使って、オープンCAEは簡単な定型業務、あるいはソースコードを独自用途にカスタマイズして使っていくのが良いだろう・・・とした結論チャートでした。

デンソーのような大企業で、解析専任者を多く擁する会社では、ほぼこの考え方で使い分けをするのが正解だと考えていますが、そうでない会社の場合にはあてはまりません。これからCAEを導入したい場合とか、解析専任者が唯一人で頑張っている会社では、使い分けるでなく、どちらかを選ぶしかないでしょうから。

では、どうすれば良いのか? 正解はないと思いますが、一つの指針は出せると思います。

取引先の要請だとか差し迫った状況でCAEをやらざるを得ない状況にあれば、商用ソフトでしっかりしたサポートの受けられそうなものを使うしかないでしょう。そうでない場合、まずはオープンCAEから始めてみたらどうでしょう。何せ元手はほとんどかからないのですから。しかも、このアプローチこそ、スマートエンジニアへの道に繋がるのです。

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